2015年01月

 今年も千葉サンライズ九十九里寄席の時期になった。今回のメンバーは地元の東金出身の柳家花どんと柳家紫文とアタシである。東京から京葉線で大網まで快速で約1時間、特急だと40分位であるが、急ぐ旅でもないし、ちょうど良い時間の特急がないため、いつも快速を使う。

 駅からはホテルの車で25分程で扇形のホテルサンライズ九十九里に到着。会場は300席の椅子が並べられていて、今年も完売だそうである。尤も、前売り800円で米1キロがもれなく付く。当日は1000円でこちらは米のサービスはないそうだ。落研の後輩Oは今回、当日の申込みになってしまい、米もなかったとブツブツ言っていた。

 前座はすぐに打ち合わせに入り、アタシは楽屋で昼食を取る。刺身、なめろう、天ぷらなどの定食である。ここは毎年、違う定食が出てくるので、何が出てくるか楽しみだ。でも、なめろうが定食に出てくるところがいかにも海に近いホテルらしい。

 2時開演。陽気な高齢者ばかりだ。平均年齢はおそらく78歳くらいだろう。Oなんぞは一番若い層になるだろう。前座に続いてアタシ、中入りを挟んで紫文、そして最後にアタシの2席目で演芸は終わり。最後に大抽選会があり、お開き。1時間半くらいなのだが、高齢者が多いのでどうしても休憩を取らないといけない。

 アタシの1席目の途中で1番前列の方が、車いすで会場の外に出て行き、そのまま戻っては来なかった。アタシの噺にあたってしまったのかも知れない。2席目の時は2列目のオヤジさんが堂々といちばん前を通ってトイレに立って行った。ここでは何が起こるか分からないので、とにかく、気にしないのが一番。

 終わってからは九十九里の酒屋の若旦那(といっても、もう還暦を過ぎた)とOと3人でいつもの料理屋で新年会。おととしだったか、大雪で電車が止まって、帰るのに3時間半もかかってしまった。今年はその心配はない。夜遅くまで昔話に花が咲いた。

 正月三が日と掛けて、XX師匠と解く。そのココロはカンイリも近いでしょう。

 

 今年初めての第112回目の独演会が終わった。去年からお江戸両国亭に場所を変えて行なってきたが、お江戸両国亭が内装耐震工事のために使えなくなり、仕方なく今回と3月の会は以前使っていた日暮里のサニーホールで行なわざるを得なくなった。

 いちばん心配なのはお客さんが会場を間違えないかということだったが、今回は誰もいなかったようだ。前回は両国亭だったのだが、久しぶりに来たお客さんが勘違いしてサニーホールへ行ってしまったことがあった。だから、今回は何度も念押しをしたので、その甲斐があったようだ。

 1年ぶりにサニーホールで行なうことになり、久々に椅子を並べる作業を行なった。今回は受付に前座を使ったので前座が2人になったため、作業がはかどって、あっという間に終わってしまった。これなら、15分早く開演しても良かった位だ。もっとも今回は席数を少し減らしたせいもある。

 さて、新年ということもあり、お客さんにはアタシのイラスト入りのティシューペーパーを配ったが、ことのほか好評だった。これは毎年、前座とお囃子さんには全員に配っているのだが、根岸の若旦那が欲しがるので毎年進呈している。今年も愛用してくれているはずだ。

 今回の独演会では「柳田格之進」を出してみた。10年ぶりくらいになるだろうか。今回さらってみると、やはり面倒な作品である。人情噺なので、どうしても地の部分が多くなるため、その部分でお客さんを何とか納得させなくてはならない。いろいろ表現を工夫してみたのだが、果たしてどのくらい理解してもらえただろうか。

 アタシ自身もかなりの稽古をしたつもりだったが、納得のいく出来ではなかった。10年前の時の方がはるかに出来は良かった気がする。やっぱり一発勝負というのはむずかしいことを改めて知らされた。だが、以前やった時にいい感触を持っていたので、何回かやる内には自分の物になるはずだ。

 打ち上げは居酒屋のチェーン店。ここを出てから、浅草橋で新規開店の24時間営業している海鮮浜焼きの店に行く。ここは自分で目の前の網で海鮮ものを焼くシステム。絵師のM氏と鳥越の独りモンと面白がって貝やら魚やら、いろんな物を焼いて大いに盛り上がった。面白い店なので、結構、はやりそうな気がする。

 浜焼きの店とかけて、裏の貸付と解く。そのココロは上手く扱わないと焦げ付くことがあります。

 

 久々に江戸芸能ひろめ旅に行ってきた。今回は宮城県である。バブル崩壊以前には地方のホテル、旅館の景気もよく、いろんな所に出向いたものだが、この節では残念ながら規模も縮小をせざるを得なくなって、演ずる場も数も激減している。

 今回のメンバーは講談のYが急病のために参加出来なくなり、急きょSに変更され、新内のKとアタシ、そして、マネジャーの4人である。アタシにとって、YもKも初めての旅となる。まあ、芸人同志だから、別に何の心配もない。とにかく旅の仕事は気の揃わないメンバーが一番困る。

 まずは新幹線で古川に出て、ローカル線で鳴子温泉へ。駅に下りると硫黄の臭いがし、あちこちに残雪が残る。ここの地元の古い旅館が最初の会場である。旅館に向かう前に蕎麦屋で腹ごしらえ。評判の店である。と言っても鳴子で知っているのはこの店だけ。他に蕎麦屋があるかどうかも知らない。

 夜の興行まで時間があるので、旅館組合の外湯に出かけた。いやあ、ここの湯は馬鹿に熱い。3分も入っていられない。仕方なしにぬるい方の湯に長時間浸かる。その後は旅館のテレビで相撲を見たりしてゆったり過ごす。この日のお客さんは30人ほど。夜9時から食事。その後、さっきの蕎麦屋で2次会。

 翌日は古川に戻り、茶室がいくつもあるような純日本風の立派な施設での寄席。ネタ帳(出演者と出し物を記録した帳面)によると14年前に来ているはずなのだが、まったく記憶がない。100名ほどのお客さんに大いに楽しんでいただいた。

 新幹線で仙台に出て、ホテルのバスで秋保温泉の超豪華なホテルへ。客室棟がいくつもあるので移動するたびに迷い子になりそうである。夕食に牛タンが出たが、肉が厚すぎて噛み切れない。高齢のマネジャーは歯が悪くて噛み切れないとぼやく。かわいそうに。

 3日目の朝も朝湯でのんびり過ごしてから午後の寄席に備える。とにかく、ゴロゴロして、時間が来ると食事だ。のべつに食べているようで、さすがに昨日の昼の弁当は一食抜いた。そうしないと完全にカロリーオーバーだ。この日のお客さんは昼食、温泉入浴付きで格安のお値段。100名以上のお客さんに喜んでいただいた。ひさびさのゆったり、のんびり旅を楽しんだ。

 第5回本所落語倶楽部が終わった。だが、その会場であるお江戸両国亭での入りが良くない。そのため、今回で終わらせることも考えていた。両国亭は間もなく耐震内装工事に入るため、5月いっぱいまで休席になるし、夜席は円楽一門が使っているので、今回は昼席にしてみた。

 しかし、これが良かったらしい。初めて大入りとなった。そして、この会ではいつも「ちんちろりん」をやっているのだが、こちらも大勢のお客さんが参加してくれた。何と1人で12回もやってくれた方がいた。いちばん欲しがっていた品は扇子なのだが、何とかゲット出来たのだ。そりゃあ、12回もやりゃあ、扇子の目も出るよな。

 まあ、そんなわけで、予想に反する入りでこれからも続ける気にもなったが、次回からは昼席にしようかと思う。近頃は寄席の方も夜席よりも昼席の方がはるかに入りが良い。これは平日でも同じである。アタシが前座のころは当然のごとく夜席の方が入りが良かったのだが、いつ頃からか完全に逆転してしまった。

 さて、この日は時間通り4時にはハネたのだが、その時間を過ぎると円楽党の夜席前座たちが楽屋入りして来る。この時期、前座と顔を合わせればお年玉をやらなくてはならない。前座が早めに来るかも知れないことをこの日の出演者たちに伝えると、宮治は高座を終えるやいなや早々に引き上げて行った。

 トリの喬太郎もいつもなら高座を終えてから一服してから帰るところだが、早めに支度をして楽屋を後にした。お蔭で鯉昇ともども、前座1人にお年玉をあげるだけの被害で済んだ。アタシは毎月1度だけだが、円楽党の両国寄席でお世話になっているから仕方ないが、この日のその他の出演者は円楽一門とは疎遠である。したがって、お年玉を出す必要もないのだ。

 それに円楽党の前座は7、8人はいて、下座さんを加えるとかなりの負担となる。だから、出来ることなら避けて通りたいのが人情である。アタシらの仲間うちには正月は寄席の近くでは、前座の通りそうもない道を選んで歩く連中もあるくらいだ。もうしばらく、前座と顔を合わせたくない日々が続く。

 

 例年通り、しん平宅で新年会があった。今年はカミさんが体調が悪く、アタシ1人の出席である。6時という約束なので時間通りに伺ったら、未だ誰も来てなくて、しん平が退屈そうに寝転がっていた。でも、少し前まで映像関係の方々が大勢見えていて大騒ぎだったらしい。

 しばらくすると、二つ目連がドカドカと上がってきた。その中に新二つ目のKがいたが、ついこの間、祝儀を渡してあったので一安心だ。すぐに乾杯して一座に加わる。その後も連れだって総勢10名ほどの賑やかな祝宴となった。しん平の好みで集めた連中なのだろうが、根岸の一門は誰も見えず、どういうわけかウチの一門が混じっている。

 そして、その後、この一門の師匠の話で持ち切りになってしまった。その師匠は下ネタ好きの人間なのだが、やることも変態まがいの奇行が多いことがわかった。とても、ここで活字には出来ないような話ばかりだ。尤も噺家の言うことだから、半分は割り引いて聞かないといけないのだろうが。

 しかし、普段の姿とは違ったその師匠のゲイ談を聞かせてもらって、お蔭で場は大いに盛り上がった。この日ばかりは香盤順(我々の世界の序列)も何のその、無礼講の大宴会となった。正月だけに行なうのはもったいない集まりである。藪入りなみに夏もやって欲しいくらいだ。また来年が待ち遠しい。

  

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