2016年08月

 我が町内に小さな趣味の図書館なるものがある。主に演芸や映画、演劇関係の書物や資料が置いてあって、月に1回、大きなスクリーンで珍しいDVDや映像を放映している。今月は「夏休み特集・懐かしの子供番組大会」というものであった。

 毎月1日に送られて来るメールマガジンで、それを見つけて、すぐに申し込んだ。マンションの1室なので大勢は入れない。せいぜい10人位のものである。先着していたアタシのお客であるK氏から電話があり、早く来いとのこと。出かけてみると、予想通り60代以上の高齢者ばかりの盛況である。

 入場料を支払って、席に着く。いつもこの日は自分の好きな飲み物は持参することになっている。アルコールOKなので、焼酎を500ミリリットルのペットボトルに詰めて持って行った。ところが、飲み残しのいい焼酎があるからと、それをいただくことにして、自分の持参した焼酎は早々にバッグにしまってしまった。

 さて、番組は吉永小百合出演の「まぼろし探偵」、大瀬康一主演の「月光仮面」、そして「怪傑ハリマオ」である。当然すべて白黒画像。都心で撮影したであろう場面でも車はほとんど通らない。使われている車はすべてアメ車である。町並みも閑散としていて、実にのどかなもんである。

 ストーリーも子供にも分かり易い位に単純だ。また撮影場所も同じところの使いまわしが多い。ロケ車などないから、大勢での移動が大変だったんだろう。我々観客は酔いが廻って、みんな勝手なことを言ってワアワア騒ぎながら、ますます酒と肴が進む。いやあ、堪能した。

 こういう企画なら、ちょっとしたスペースがあればすぐに出来るし、金をとっても採算が合うに違いない。いや、もうどっかでやっているのかも知れない。とにかく、和気ワイワイと手放しで楽しめる。またの機会が楽しみだ。ぜひ次回も参加したい。

 久々の本所落語倶楽部となった。今回はいつもの会場の深川江戸資料館が取れなかったため、お江戸両国亭になったためである。それに出演者も三三とぴっかりしかつかまらず、小さな会場で気楽にやりたかった、という意味合いもあった。

 しかし、出演者が3人になったため、一人2席ずつやることにした。ぴっかりはアタシが「夏泥」を出したにもかかわらず、「締め込み」をやると言ってきたため、出し物を替えさせた。これは当然の話でどちらも泥棒の噺である。つい、うっかりということらしい。ぴっかりでなく、うっかりと名前を変えた方がいい。

 そして、結局すったもんだの挙句、初心に帰って「子褒め」をやるという。まあ、たまにはいいかなとOKを出した。寄席では子褒めはもっともポピュラーな噺で、前座が必ずやる演目である。だから、やりたいと思ってもなかなか出来ないことが多い。まあ、アタシもそんな理由であまりやらなくなってしまった噺のひとつである。

 前座のころ、紀伊国屋寄席の打ち合わせのため、師匠のお伴で付いて行ったことがある。圓生師匠、小さん師匠らが、今後、半年間の演目を決定するために打ち合わせをするのであるが、自分のやりたい噺が出来ない時など、イライラをぶつける場面などがあった。特に圓生師匠などは「それじゃあ、私のやる噺がないじゃないか」などと感情をぶつけることもあった。

 圓生師匠ほどネタの多い師匠がそんなはずはないのだが、つい、そんな駄々をこねて相手の出方を見る駆け引きを楽しんでいるかのようなことをしていたのを思い出した。そんな時に小さん師匠が出番の浅い時に「子褒め」を出したりするのだ。へー、紀伊国屋寄席でもこんな演目をやることがあるのかと思い、驚いたことがあった。

 さて、当日は三三が遅れて来て、アタシが先に上がることになって「年枝の怪談」をやった。そしてその後、三三が「茄子娘」をやることになったが、当人もダレて、ホントはこんな噺で中入りとなることはないんですが、と言いながら、高座を勤めていた。まあ、それほどまでに、我々にとっては噺の順序は重要なものなのである。

 中後はアタシが「夏泥」をやって、トリの三三は「茶金」だった。ぴっかりの最初の出し物は「片棒」、あんこは「桃太郎」という、なかなかバラエティーにとんだ番組(ホンマかいな)となった。狭い会場だったので、お客さんが大勢駆け付けたらどうしようかと懸念していたが、まったく、心配なかった。

 季記の会があった。会場はこのところ、よく使っている京橋の和洋料理の店である。下ごしらえのしっかりとしたいい仕事をする割烹店で、手ごろな値段でおいしいという句会仲間のもっぱらの評判である。今回も2階の部屋を使わせてもらう。

 この店では花緑が落語会をやっているそうだが、どの部屋でどのようにやっているのかは知らない。小部屋がいくつあるかも知れず、いちばん大きな部屋がどの位のスペースがあるのかも知らない。他人の落語会より、こちらはいい句を作ることに専念したい。でも、当たり前だが、なかなか出来ない。

 今回の参加者は6名である。ちょっと寂しい。兼題は「風鈴」と「昼顔」である。アタシの句。

     太棹の 止みて風鈴 よみがへり

     昼顔に 足くすぐらる 六地蔵

 六地蔵の方は女性の絵師の方が天に選んで下さった。そして、アタシが天に抜いた句は

     昼顔は 気怠き午後を 彩りぬ

 席題は「八月(はづき)」であったが、あまりいい句がなかったので割愛。やはり、10人くらいが集まらないと盛り上がりに欠ける。次回の句会に期待したい。

 毎年、この暑い時期の8月11日は圓朝忌である。明治33年のこの日、明治の大名人と言われた圓朝師匠が亡くなった。また、今年から、この日が山の日となり祝日になったため、人通りも少ない。例年は地下鉄の千駄木から歩くのだが、きょうはJRの日暮里から歩くことにした。

 千駄木から菩提寺の全生庵までは歩いて5分程だが、ほとんど上り坂である。そのため、徒歩で10分ほどかかるが日暮里からは平坦な道と下り坂のため、楽なのではないかと考えたのだ。それにきょうは比較的気温が高くなく、楽だった。何しろ、おとといは37、7度という猛暑だったので、それに比べたら、かなり楽である。

 全生庵は谷中墓地を抜けて下り坂を下りると、すぐである。台東区を巡るバスから降りて来たのは小里ん師匠と歌る多のご両人。どうやら、このバスが便利らしい。寺の境内にテントが張られ、そこに多くの芸人が集まる。そして、その周りに一般の参詣人が取り巻いている。

 10時前に全員が本堂に移り、読経が始まった。その後、焼香をして圓朝師匠と去年から今日までの物故者の供養をしてから、奉納落語があった。今年は吉窓の「十徳」であった。この噺はアタシもやるが、出どこは圓窓師匠なので全く同じである。その後、使わなくなった扇子の供養をして、すべての法要が済んだ。

 午前11時。広間に場所を移して、いつも通り軽食の接待があった。日頃あまりお目にかかれない師匠方もお見えになって、しばし歓談。ビールを飲みながら、木村屋のアンパン、藪蕎麦、稲荷ずしをほおばる。みんなでパーパー、パーパーやっていると事務局長から静かにと注意を受けた。そのため、みな正午までには解散となった。

 この日、出された西瓜ばかりバクバク食べていたS師匠、食べるとすぐに次の西瓜を注文している。これを見ていたT師匠、これがホントのスイカ注文だよ。ハハハ。

 9月4日の謝楽祭に向け、湯島天神境内の店舗の割り振りがあった。物品販売の店舗数は去年並みのようだ。目新しい店としては射的とか石というのがある。射的は分かるが石はどうもわからない。この店はHの店で噂ではどうやら、海岸や山やその辺で拾った石を販売するのだという。

 果たしてどんな目新しい石が登場するのか分からないが、値段が付くものかどうなのかも分からない。当日のお楽しみということになるのだろう。他に芸人のグッズを扱う店がずいぶんと増えた。このグッズも店によって、どういうものが登場するのかお楽しみということだろう。

 面白いのは謝楽祭寄席の第1部のトリを務める桂文楽師匠の芸人屋台である。ペヤングとだけ書いてある。かつて、焼きそばペヤングのCMを一手に引き受けていた文楽師匠が恐らく、調理した焼きそばを出すのであろう。果たして売れるかどうか、こちらも当日のお楽しみだ。

 アタシはちんちろりんの他にグッズも扱うが、今年は落語協会と個人の浴衣の反物が手に入った。しかし、あまり高くすると売れ残るので金額の設定がむずかしい。本来は協会員には7000円ほどで卸している品物であるが、おそらく半額ほどにしないと売れないだろう。

 他に珍しい物では志ん朝師匠が亡くなった時のお返しの風呂敷がある。未亡人の挨拶状も付いている完全品である。この手のマニアであるMさんにメールでお知らせしたら、予想通り、すでに手許にあるそうだ。この方は9月3日には大阪の彦八まつりに参加して、翌日には謝楽祭に参加するのである。去年もそうだった。当人は何とか日にちをずらして欲しいと言っているのだが、こればかりはむずかしいのが現実である。

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