2017年08月

 近所にある私設図書館の眺花亭に出かけた。この日は月1回行われる映像によるイベントの当日だったのだ。懐かしの映画やドラマ、テレビ番組などが放映される。今回は昭和35年ごろのテレビ番組から「まぼろし探偵」と「少年ジェット」の2本立てである。

 「まぼろし探偵」には吉永小百合が出演するというので、どんなもんかと申し込みをしたわけである。以前、ここでは「怪傑ハリマオ」やら「月光仮面」も見たが、今回改めて見てみると、やはりその頃のテレビ番組は映画と違って、いかに金を掛けずに安直に作られていたかがよく分かる。

 それに知った役者はほとんど出てこない。冒頭に藤田弓子さんの名前があったので目を凝らして見ていたが、女子事務員としてほんの1カットだけである。当人と確認するほどにはっきりとは顔が確認できない。それにセリフもないから、本当に当人なのかは分からない。

 「少年ジェット」が丸の内のビル街を颯爽と愛犬シェーンと駆け抜けるシーンがあったが、当時のビル街は実に立派である。現在のビル街とは比べるまでもないが、当時の官庁街は重厚で落ち着いた雰囲気があって、見ごたえがあった。車の数も驚くほど少ない。

 それにしても他に役者がいないのかと思えるほど、素人に毛の生えたような役者が多い。監督はどんな演出をしていたのか訊いてみたいほどだ。それにストーリーも実に簡単。子供だから、すべて納得して見ていたのだろう。それに比べたら、今のテレビドラマの格調がいかに高いかがよく分かる。ああ、そうだ。吉永さんはかわいかったですよ。

 謝楽祭で募集した俳句の選句を世之介に頼まれて、落語協会の事務所に向かった。湯島で謝楽祭を始めるようになってから俳句を募集するようになったようだ。以前にも扇橋師匠が健在だった頃にやったこともあったが、再び行うようになったようだ。

 集まった句は全部で300句ほど。選句するのはアタシと世之介の他に2人で、1人は色物である。今年の兼題は「柿」「扇子」「寄席」の三題。「寄席」は季語ではないので自由題ということになるのだが、選句してみると果たして季題のない物がいくつかあった。むろん除外する。

 4人で選句して、3点句や2点句を優先して天、地、人を振り分けた。迷ったときはすべて世之介にお任せだ。そんなこんなで2時間半ほどをかけて、すべての入選作が決まった。これらの結果は9月3日の謝楽祭当日に発表されることになる。

 その後、帰宅して夕方にかみさんと清元の会に出かけた。会場であんこと待ち合わせ。この日の催しに出かけたのは、あんこがいつもお世話になっている竹本の太夫さんへのご挨拶も兼ねている。ぜひ、一度お逢いして一言お礼を申し上げたかったので、これで少し気が楽になった。

 この日の会は清元の他にも京都の芸妓さんの踊りやら、また対談などもあり、バラエテイーに富んでいてことのほか楽しめた。やはり、たまには古典芸能をじっくり楽しむことも我々には必要だ。終わってからは新橋に出て、高校時代の同級生が働いている焼きとんの店に向かった。

 今年も圓朝忌を迎える季節になった。例年、この時期は暑いのが当たり前であるが、今年はちょっと様子が違った。ずいぶんと過ごしやすいのである。いつもなら、大汗をかきながら三崎坂をフーフー言いながら上るのであるが、今年はあまり汗をかかない。

 例年は法要の読経が始まるまで境内のテント内で待機をして、飲み物を飲んだり、冷たく冷やしたおしぼりで顔をぬぐうなりするのだが、その必要がなく、早めに本堂に上がることになった。境内を見渡すと、謝楽祭の常連客のMさんがいたので、声を掛ける。今年も謝楽祭の前日は大阪の彦八祭りに参加して、翌日、謝楽祭に参加するという。ご苦労なこった。

 本堂に上がると例年より参加者が少ないと思ったが、そうではなく、いつもより本堂に上がる時間が早かったためで、後から続々と協会員が集まって来た。人数は例年通りの様である。一般のお客さんの数も同様。今年の進行係は扇遊師匠である。

 読経に続き、これも恒例の奉納落語があり、今年は円丈師匠の担当。例によって、目の前に台本を置いて、それを読み進んでいくのだが、時たま原稿のどこまで進んだのが分からず、しどろもどろになるのは相変わらず。それでも近年の奉納落語にはない多くの笑いを誘っていた。

 その後は高座扇子供養があり、お焚き揚げの火の中に扇子を投げ込む。アタシも2本持参した。そして、市馬会長のあいさつがあったが、例年参加をしている落語芸術協会会長の歌丸師匠は今年は欠席をした。昨今の体調をみたら当然のことだろう。

 供養も無事に終わって、協会員には軽食の用意があった。これも例年通り、そば、あんぱん、助六寿司が提供された。その他にスイカなどもあったが、陽気のせいか例年ほどは手が出なかったようだ。アタシもそばをご馳走になり、谷中墓地を抜けて日暮里から省線に乗った。

 パソコンの具合が悪く、しばらく夏休みを頂いておりました。再開です。先日、落語協会から段ボール箱3箱が送られてきた。今年、落語協会で募集した新作落語台本である。全部で338本だそうだ。例年よりはるかに多い。今年の募集は一人2本に限られたので、いかに多いかが分かる。

 現在、夢中で読み込んでいる最中である。このうち、これはと思う作品が15本もあれば上々であろう、と思いつつ読み進んでいるが、果たして15本にはならないかも知れない。ただ、最後にサゲを付ければそれで落語です、というような作品が多すぎる。そして、そのサゲがまた、面白くない。

 小説ではないんだから、ただただストーリーや会話を交わしていればいいわけではない。その会話や物語の中で如何に笑いを取るかが勝負である。特に最近の聞き手は随所にくすぐりを入れないと満足しない。原稿用紙15枚のうちに読み手を感心させるくすぐりがいくつか欲しい。

 たしか募集要項では原稿用紙15枚以内ということだが、10枚に満たない作品もある。アタシはこの手の物は採用しない。また、あまりにもト書きの多い物も採用しない。ト書きなしで分かるような情景を表現できない作品は落語には不向きだからだ。

 この台本のうち、最優秀作品には30万円の賞金が与えられる。アタシら落語協会員は年数万円の年会費を支払っている。いわばそのような血税から与えられる賞金である。これは慎重にならざるを得ない。ぜひとも賞金に値する演じるにふさわしい作品を書いてもらいたい。

 

↑このページのトップヘ