2020年02月

 毎月第4水曜日に行なわれている松丘亭寄席も、この日は玄関にアルコール消毒液のスプレーボトルが置かれていて、そこに寺男のI氏がいて手の消毒をするよう案内していた。また同時に使い捨てマスクが置かれていて、それを装着するよう促していた。

 いよいよそこまで来たかという感である。しかし、中止になるよりもそのような準備をしてまでやって下さる方が我々としてはありがたい。いつも楽屋として使用している部屋に入ると、すでにいつものメンバーが控えていた。皆同様にマスクをしている。また、この日は落語会会場の障子は開放にしたままになるという。

 さすがに高座に上がる時はマスクは外すわけだが、アタシの出番が来た時マスクをしたまま上がってやろうかと言ったら、高座で頭を下げてマスクを懐から出してした方が面白いのではないかというので、その通りにしたらウケた。お客さんの数はいつもより減るかと思っていたが、そんなことはない。

 会が終わってからの打ち上げも、この日は一つ盛りの食べ物を皆の箸でつまむことをしないように各自に取り分けてあり、割りばしが使用された。ここまでしなくても、とも思うのだが、気を付けることに越したことはないということだろう。宴会はいつも通り行なわれたが、やはり早めに終えることになってしまった。果たして来月は?

 都内のオフィスで落語をやってもらえないかとの依頼があった。そもそもは社内のレクリエーションの一環として行なわれるもので、職場のスペースを利用して20人ほどの社員が対象という。しかし、レクリエーションであるため、飲食をしながらというのが希望だ。

 アタシは飲食を伴う所での落語はお断りしている旨を伝えた。まあ、これで半分以上の方はあきらめるか、取りやめることを決断するのだが、食事は落語の後にするのでやって欲しいという。そこまで言うのならと、先方の希望通り、前座と2人で出かけることになった。

 最寄りの地下鉄駅から地図を頼りにすべて横文字の会社に訪ねてみると、立派なビルの2階。カタカナ文字の会社は多いが、すべて横文字の社名は珍しい。社名を見ただけでは何の会社かは分からない。最近の会社はみなそうだが、セキュリティ対策が厳重で簡単には入れない。

 こういうことは今時の前座に任した方がいいので、玄関先で先方に連絡を取ってもらう。すぐに迎えが来て、職場の隣にあるレクリエーションスペース横の部屋に通される。社員は若い人ばかりで高齢者はいない。車内の様子を見たり、積み上げられた段ボールを見ても何の会社か分からない。

 依頼して来た方以外はすべて落語初心者ということなので、前座には「子ほめ」をやるよう進めたが、どうも反応がイマイチ。本物の初心者のようだ。アタシは酒にまつわる噺を始めたが、犬の散歩をしている婦人に酔っぱらいが絡む小噺をやってみたが、すっかり蹴られた。この小噺が受けなかったのは初めてだ。 

 それでも気を取り直して何とか酔っぱらい噺を30分しゃべり終えた。呼んでくれた方は落語の面白さを皆に吹聴して、今回声を掛けて下さったのだろうが、彼はこの落語会をどのように評価したのだろうか。それにしても一体何の会社なのか未だに分からない。

 

 大分県の中学校から学校寄席の依頼があった。その日は「3年生を送る会」があり、その中で落語をやって欲しいという希望である。そして、その依頼の背景にあるのが、「学びに向かう力を育てる本物に出会う企画講座」というもので、もともとは教育委員会からの提案であったとのこと。

 そして、小学校の国語の時間では落語を学習する機会があるのだが、中学校ではそのような機会がないので、生の落語を生徒たちに聴かせたいというのが学校の考え方である。それを聞いて、今どきそのような粋な企画を立てる教育委員会や中学校があるものかと、まず驚いた。

 演ずる時間は午後の時間帯で60分とのことなので、アタシ1人で何席かやるよりも2人で4席やる方が良いと考えて、二つ目を生け捕って、当日大分に向かった。空港からはリムジンバスで約2時間。飛行機に乗っているよりもバスで移動する時間の方が長い。

 全校生徒は約200人なのだが、それに比べて会場の体育館がばかに大きい。普通の体育館の2倍近くはあるだろう。そのため心配なのは音響である。体育館で行なうととかく音が割れるものだが、音響の先生が調整して下さった結果、アンプも大きくて何の心配もなかった。

 担当の先生の話ではシャイな生徒が多いとのことで、最初は戸惑いもあったようだが、二つ目が落語に関するレクチャーを念入りにやってくれたお蔭で、思っていたよりも反応は良かった。二つ目が1席目を長めにやったため、2席目は時間がなくなり玉すだれをやったのだが、これも生徒たちには好評であった。

 この日、落語を聴いてあまり内容が理解できなかった下級生もあるだろうが、何年か後に、そういえば中学校で落語を生で聴いたことがあったなあ、と思い出してもらい、少しでも落語に興味を持ってくれるような生徒が現れてくれればありがたいと思う。

 

 

 

 毎月1回落語協会の2階で黒門亭の会議が行なわれている。これは黒門亭の番組編成と黒門亭での問題点などを話し合う場となっている。出席者は二つ目、色物を含めて10名ほど。この日の話題になったのは、このところ世界中で問題になっているコロナウイルスである。

 実は今、停泊して問題になっているダイヤモンドプリンセス号という船は我々の仕事場となっている船なのである。大型クルーズ船は長期間の旅になるため、船内でいろんなイベントや催しが行われている。その中に落語も入っていて、大抵仲間の誰かが乗っているのだ。

 そして、今回このような騒ぎにならなければ、今月中にダイヤモンドプリンセス号に乗船するはずの仲間が黒門亭の委員の中にも2人いたのだ。ところが、このような騒ぎとなり、今後の乗船はすべてキャンセルになってしまったそうなのだ。これはつらいよなあ。

 おそらく、5日間から10日間ほどのスケジュールを空けておいたはずだから、それがなくなってしまうのは正直痛い。かといって今すぐに仕事が入るはずもなく、今月はのんびり過ごすしかないだろう。仕方がないから、税金の申告を早めにして還付金を楽しみにするよと言っていたが、そんなことしか思いつかない。

 今年も家族3人で旅行に出かけた。去年に続いて伊豆高原である。以前は伊豆というと墨田区立の伊豆高原荘に行っていたものだが、数年前になくなってしまい、それからは他区の施設を使わせてもらっている。区の施設であるので、使用料も安いのでありがたい。

 今回も熱海で降りて昼ご飯を食べてから、伊豆高原へ向かうことにした。熱海と言えば去年、落研合宿で寄った店が良かったので、そこに寄ることにした。この和食処の店は地元でも評判の店だそうで、昼時は行列が出来るのが必至というので覚悟して出かけた。

 表に行列がないので喜んで入ってみると、2階の入り口前にやはり2組のお客さんが待っていた。20分ほど待ってから席に案内される。てんでに好きなものを注文して別に刺身の盛り合わせを注文。家族の評判も良く、やはり、この店にして正解だった。

 食事を終え伊豆高原に向かう。駅から迎えのバスで高原荘へ。部屋に入ってからしばらくしてフロントから電話。中国人の方はいらっしゃいませんかという質問。むろん、いないと答えたが、いると言ったらどうなったのだろう。免疫検査でもするつもりなのだろうか。ゆっくり湯に浸かってから夕食後、早めに就寝。

 翌日はサボテン公園動物園へ。ここは次女の希望である。動物園と言ってもここはカピバラやウサギやプレーリードッグのような小動物とサボテンなどの植物が主な見世物になっている。ゆっくり楽しんでから、今回のメインの河津桜を見に河津へ向かう。

 早咲きの河津桜とは言いながら、少し早すぎると思ったのだが、今年は暖冬だったので結構咲いている。やはり来てよかった。実に見事なもんだ。買ったばかりのスマホの使い方を教えてもらいながら、写真も撮ることが出来た。この翌日から河津桜まつりが行なわれるという。河津桜と掛けて、酔っぱらいと解く。そのココロはきょうもサケ、明日もサケ。

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