2020年07月

 落語協会の総会が行なわれた。本来は毎年6月に行なわれるのであるが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大により延期され、7月の末日に行なわれることになった。毎年、この日は総寄合の日で、浅草の浅草寺に参拝をして、ビューホテルで会食となるのであるが、その日が総会に当てられることになったのだ。

 ビューホテル4階の飛翔の間をすべて使って、1テーブルに1人というディスタンスを取っての開催となり、テーブルの上にはペットボトルが1本ずつ置かれている。アタシの予想では今年の出席者はかなり少数になるのではと思っていたが、そのようなことはなかったようだ。

 会長のあいさつもコロナ騒ぎの所為で今年、来年の落語協会の決算の数値はかなりの低水準になるだろうと予測し、コロナに充分注意してほしいなど、とにかくコロナの話に終始。また、広報からも楽屋内での身の処し方の説明や注意事項が伝えられ、登壇者が代わる度にマイクが交換されるなど、とにかく、コロナのオンパレード。

 特に広報からは寄席の終演後の打ち上げは絶対に止めてもらいたいとのこと。それというのも、寄席の近くで打ち上げをやったグループがあり、それを見つけた一般のお客さんから落語協会に連絡があったとのこと。それというのも、アタシらの打ち上げは一般の方々に比べると、やたら声が大きくバカ騒ぎするから、すぐバレてしまうのだ。

 人事では監事、理事から2名ずつの退任者があり、新たに新役員が6名決まった。また、それに先立ち、改選に伴い定款の役員の人数の増員の改定が認められることとなり、役員の平均年齢が、また若返ったようだ。それだけでも以前の落語協会の役員と比べると、ずいぶんと改革が進んだように見える。結構なことである。

 144回目の独演会が終わった。本来は145回目に当たるのだが、前回がコロナ騒ぎのために飛んでしまい、今回が144回目となった次第。3月の会の時はあたりにちょうどコロナが広まって来た頃で、お客さんの数も今までで最低だった。

 今回もお客さんの入りは期待できなかったが、それでも大健闘して前回の倍以上は入って下さった。お客さん方の勇気と行動力に感謝するばかりだ。それでも通常の会に比べれば6割程度といったところだろう。特に古くからの馴染みの年配の方々が少なかったようだ。

 今回は入り口で体温測定と手の消毒を行ない、また、すべての窓とドアを開け放つことにし、換気扇も最強にした。そのため、外の騒音が気になった方も多かったと思う。何しろ、京葉道路に面した会場なので、車の通行量が半端ではない。まあ、今回ばかりはお許し願いたい。

 そんな中、初めてお出でになった方もあった。1人は笛の師匠のF先生、もう一人は切り絵のH先生である。まさかお出でいただけるとは思わなかったので、こちらが恐縮するばかり。でも、こんな騒ぎの中、わざわざお出で下さるとはありがたい。面白いのはお二人とも浴衣姿だったので、かなり目立ってしまったのではないかということ。

 この会場で行なうのもあと2回だけとなった。今回は入場制限が50名となっていたが、次回は定員制限も解かれて、いつも通り顔なじみの皆様方大勢に楽しんでもらえるような盛大な会となることを願っている。

 今月も松丘亭寄席は通常通り開催された。今回も本堂を使用することになり、高座はいつもより後方に下がって、ご本尊のすぐ前に位置することになった。そして、高座が小さいため、扇子を置く場所がないので、高座の前に高座と同じ高さの台が置かれていた。

 高座と客席の間にビニールシートが上から垂らされているのは先月と同じである。高座が下がったことにより、客席は少し広くなったようである。この日のお客さんは25人といったところか。このコロナ禍の中、わざわざお出でいただけるのはありがたい。

 この日はアタシがトリで「王子の狐」を30分ほどしゃべって、お開きとなった。楽屋にはアタシのTシャツなどを作ってくれている衣料品プリントメーカーの社長さんから、出演者全員の名入りのマスクが色違いで2枚ずつ届いていた。でかでかと名前が入っているので、ちょっと恥ずかしい。

 これで通常使うマスクは6枚になった。そのうちの1枚はアベノマスクであるが、ますます使う頻度が落ちそうである。テレビを見ていても閣僚でさえ使う人がいないのだから、よほど使い勝手が悪いか、何らかほかの理由があるに違いない。この晩も近所の中華料理店で打ち上げが行なわれた。しかし、今回もカラオケはなし。

 例年の5月上席の浅草演芸ホール昼席がコロナ騒ぎのためになくなってしまい、その代わりに7月下席に振り替えの形で編成された。何にしてもなくなったものが復活するのはありがたいことだ。アタシの出番は3日間だけだが、みんなが何となく気分が落ち込んでいる時だけに頑張って高座を勤めたいと思う。

 初日に楽屋に行ってみると、入り口で体温検査と手の消毒。前座も全員マスク姿である。立前座から、この芝居はコロナ騒ぎのために3密となるような打ち上げを行なわないため、トリの木久扇からの木久蔵ラーメンが全員に手渡される。トリは大変である。

 客席はとびとびに席を空け、通常の半分ほどの席数になっている。そのため、知り合い通しでも席が離れるため、何となく反応がよくない。やはり、客席は密になっていないと笑いが盛り上がらないものだ。これは仕方がない。お客さんのせいではない。

 いつもアタシは初日はトリが高座を終わるまで楽屋に残るようにしているのだが、今席は残らないようにとの木久扇からの伝言があって、全員高座を終えたら楽屋に残らず、速やかに帰るようにとのこと。お言葉に甘えてすぐに楽屋を後にした。

 帰りの道すがら、浅草の街をふら付いてみたが、観光客はほとんど見られず人影もまばら。以前、あれほどいた外国人の姿がまったく見られない。コロナ騒ぎが落ち着くまで、当分こんな光景が続くに違いない。普段、活気のある街だけにホントに寂しい限りだ。

 カミさんが月に何回か実家に帰っている。実家には親父さんが一人で住んでいて、その世話をしに2泊3日の泊りとなっている。親父さんは今年100歳になったが、いたって元気である。最近、ステッキを使用するようになったが、帰りに忘れて来るくらいである。

 帰宅する日、カミさんからメールがあり、カミさんの妹夫婦が爺さん共々墓参りに行きたいと言っているので、一緒にどうかとのこと。暇を持て余しているので、むろんご一緒することにした。妹夫婦は千葉県に住んでいるのだが、午後になって、爺さんとカミさんを乗せてベンツで我が家にやってきた。地元に13台しかないという自慢のベンツである。

 都内はすいているので、あっという間に芝の増上寺に到着。無事、墓参りを済ませて食事に行くことになった。妹夫婦の行きつけのスカイツリー内にある鰻屋である。駒形に本店のある名店Mで、この店はアタシは3回目である。そして、この日はこの日限りの「板東太郎」という逸品をいただいた。

 この店の鰻はいつ食べてもおいしい。そして、この日もまた妹夫婦にご馳走になってしまった。いつか一族引き連れてみんなにご馳走をしたいと思っているのだが、果たしていつのことになるのだろう。恐らく夢は夢で終わってしまうのかも知れない。いや、気持ちだけは充分にあるのだが。

 

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