カテゴリ: 裁判員制度

 先日、霞ヶ関の弁護士会館2F講堂のクレオで裁判員制度反対集会があった。裁判員制度が発足して4年が経つが、裁判員を経験したがために急性ストレス障害にかかった女性が訴訟を起こすなど、様々な問題が起こっている。

 この集会では冒頭に大学教授の講演があり、その後にアタシが落語を演じる段取りとなっていた。この種の集会でアタシが落語を演じるのは2度目である。今回の落語は自作ではなく、元判事で大学教授の作になるものである。題して「寿司食いねえ」。

 内容は国が新たな制度を始めることになる。これは国民の中からくじ引きで寿司員を選び、寿司屋でプロの職人と鮨を握るという制度である。この制度が出来れば、寿司店はお客からクレームがついても寿司員が握ったんだから、勘弁して下さいとか、仕事の手抜きが出来るなどの利点が得られるというもの。

 そして、その結果、寿司員が鮨を握る店は客足がどんどん逃げ、寿司員が握らない店はどんどん新しい店が出来る。これがホントのカイテン寿司だ、という内容。サゲがなかったので、これはアタシが付けた。しかし、内容の趣旨を変えるわけにはいかないので、ほとんど原作どおりに演じたが、ずいぶんと苦労した。

 第一、どこが受けるのか、受けないのかさっぱり分からず、不安をかかえながら、手探りの状態で演じた。ここは受けそうだと思ったトコで受けなかったり、その逆のことがあったりと、とにかく妙な反応で戸惑った。出来は、まあまあではなかったのか・・・ということにしておこう。

 終わってから、近くの飯野ビルのそば屋で弁護士の先生方、支援者の方々との宴会があった。弁護士の先生からは落語のお蔭でカンパが予想以上に集まった、と慰めていただいた。とにかく無事終わって良かったというのがアタシの実感である。

 21日、裁判員制度はいらない全国集会が日比谷公会堂であった。ちょうど、この日の3年前に裁判員制度が始まり、今年は3年目の見直しの時期に当たるので、見直しなどせずにこの制度自体をやめさせようという集まりである。

 今回の集会では講演などもあったが、何といっても目玉となるのが「怪人サイコウサイの野望をうち砕け!」という寸劇である。そして、この劇にアタシも出演することになり、先日、劇団での立ち稽古にも参加して来た。当日は夜の本番前に午後2時からの最終稽古があるというので、昼下がりの日比谷へ出かけていった。

 アタシの役は法務省やマスコミに無理やり裁判員にされてしまう国民・男という設定。そして、怪人サイコウサイに攻撃される裁判員いらなインコを助け、真の刑事弁護が行なわれるまで新たな戦いを挑んで行くというもの。

 劇中ではクラッカーを鳴らすはずが舞台上は火気厳禁のため使用出来ないなど予期せぬ制約もあったが、何とか無事終えることが出来た。何にましても台詞が一言しかなかったのが助かった。当日の参加者950名にも好評だったとのことだ。

 どう考えても裁判はプロの仕事であり、素人ごときがやるものではない。まして死刑判決の評決をしなければならないこともあり、守秘義務まである。しゃべるのが商売の我々に守れるはずがない。
 プロの裁判官とかけて、プロの魚屋ととく。そのココロはサバクのはお手のものです。
 

 20日、裁判員制度が始まってから2年がたち、裁判員制度はいらない大運動の集会が日比谷野外音楽堂であった。あれから2年がたったのだ。しかし、いまだに裁判員裁判に参加したくないという人は多い。

 高山弁護士らのあいさつがあり、8時過ぎから夜の銀座にデモ行進出発。「人を裁くより人を助けよう」「私は裁判所には行きません」などのシュプレヒコール。1時間20分ほどで常盤橋公園に到着し解散。

 アタシが思う裁判員裁判の問題点。人が人を裁くのはどう考えてもプロの仕事です。シロートがやることじゃあない。身体の具合が悪けりゃ専門医に診てもらうでしょうし、落語を聴きたけりゃ寄席に行くでしょう。シロートの医者に診てもらったり、シロートの落語を聴くために2800円払う能天気はいないだろう。

 評議で意見が分かれた場合、多数決になるんだけど、裁判官3名と裁判員1名が死刑と判断し、他の裁判員5名が無罪と判断した場合、無罪とはならない。何故か。無罪を決めた方に裁判官がいないからである。こんな多数決はないでしょう。市民感覚を裁判に反映すると言いながら、全く反映されていない。

 アタシが模擬裁判に参加して一番悩んだのが量刑である。とにかくシロートにはむずかしい。懲役2年にするか、3年にするか迷った時、裁判長からイメージで決めて下さいと言われた。こんな大事なことをイメージで決めていいんだろうか。結局、シロートが迷った時にはプロの裁判官の言いなりになってしまうのである、などなど問題は多い。

 裁判員制度とかけて、未熟な行司ととく。そのココロはまともな裁きは出来ません。そういえば東洋大後輩のねづっちを近頃見かけないけど、もう消えちまったのかなあ。

 21日、1ヵ月後にせまった裁判員制度に反対する集会が開かれた。降りしきる雨の中、日比谷野外音楽堂に1800人余の賛同者が集まった。アタシも開会に合わせて午後6時半に現地に出かけた。この野音に来たのは学生時代以来だから30数年ぶりである。
 
 呼びかけ人の挨拶が続く中、トイレに行こうとすると顔見知りのスタッフに出っくわす。用を済ませてトイレを出ると、ナントそこに高山弁護士が待っていらっしゃって、一緒に楽屋へ。さっき挨拶を済ませた蛭子能収さんらと同席する。

 8時、デモに出発。日比谷公園から銀座へ繰り出す。「裁判員制度絶対反対」「国民の8割が反対だ」「死刑判決を国民に押し付けるな」などのシュプレヒコールを叫びながら行進する。いやあ、ひどい雨と風だ。途中、行進の先頭に立っていた蛭子さんが抜けたのでそこにアタシが入る。

 右隣は家族問題評論家の池内ひろ美さん、左隣は高山弁護士である。池内さんとは去年、アタシの独演会にお出でいただいて以来の再会である。銀座から東京駅前、そして呉服橋を経て1時間ほどで常盤橋公園に到着し、流れ解散。

 その後、30人ほどで近くの大きな居酒家に場所を移動する。とにかく、みんな服はビショビショ、靴の中はグショグショなので靴下を脱いで席に座る。用意のいい人は靴下の替えを持参していて、みんな感心することしきり。

 全員の自己紹介後、「天気さえ良ければ多くの人たちにビラを渡せたのに残念だ」等の声が聞かれた。また去年、福岡でお世話になった弁護士さんらとも再会を果たし、しばし意見交換をすることが出来たのは幸いであった。裁判員

 10月28日、29日、裁判員役として模擬裁判に参加した。
 28日、午前9時、霞ヶ関の東京地裁に集合。30~70代の男女3名ずつの裁判員が参加し自己紹介があり、アタシは自由業と紹介。それに続いて裁判官3名の自己紹介と審理予定の説明があった。その後、815号法廷に移り、ここが評議室となる。本来はきちんとした部屋が用意されるようだが、今回は公開するため、あえて傍聴席のある法廷となったようだ。

 419法廷に移動。裁判官と共に裁判員席に座る。傍聴人席には50席ほどの6割が埋まっていた。へー、こんなにも傍聴人がいるんだ。ちょっと驚き。もっとも、ほとんどは司法修習生らの法曹関係者だという。裁判長から冒頭手続き、検察官、弁護人の冒頭陳述があり、815号に戻り15分ほど休憩。この後何度か休憩はあるが、ただボーッと出来るわけではなく、その都度、裁判長から今までの経過説明があるため緊張の連続である。

 419号に戻り、検察官請求の証拠の取調べ、また休憩。とにかく4階、8階を行ったり来たりだ。また法廷に戻り、被害者Aの証人尋問。ここで昼食休憩。弁当は裁判所で用意してくれた。ここでも食事をしながら裁判の話ばかり。考えてみりゃあ、裁判官に分からないところをゆっくりと、ざっくばらんに聞けるのはこんな時間しかない。

 ここで事件の要旨。『被告人は外国人で被害者Aさんに対し、いきなり背後から抱きつくや後方に引き倒し、スカートをまくり上げるなどの暴行を加え、強いてわいせつな行為をしようとしたが、Aさんが大声を出し抵抗したため、その目的を遂げず、Aさんに約1か月間の加療を要する右中指捻挫、背部打撲の傷害を負わせた』というもの。罪名、強制わいせつ致傷。

 午後は13時すぎから弁護人請求の証拠の取調べ、Y氏の証人尋問、休憩、Tさんの証人尋問、休憩、弁護人の被告人質問、休憩、検察官の被告人質問、検察官請求の証拠の取調べと続き、すべて終わったのは予定通り16時40分。とにかく、あくび一つ出来ない緊張した状況がずっと続いた。それに被告人が外国人のため通訳をしなくてはならず、通常の裁判より時間がかかったようだ。初日、終了。


 29日、10時集合。419号法廷。まず検察官の論告、弁護人の弁論。どちらも図解にした用紙やパネルで説明してくれるので分かりやすい。815号にて休憩後そこにて評議、1時間20分ほど。被告人は飲酒をしていたのだが、その酔い具合や示談で100万円を被害者に支払ったことなどが争点となる。ここで昼食。昨日同様、食事を楽しむという雰囲気では全くない。

 13時から再び評議。ここで初めて被告人に対して有罪か無罪か、どの位の刑になるのか、執行猶予となるのかどうかなどが話し合われる。アタシは懲役2年、執行猶予3年を主張したが、5人の多数決で懲役3年、執行猶予5年ということに決まった。その後、判決書を作成し、15時、判決宣告。裁判終了となった。

 裁判官は相場というものを知っているから、だいたい、量刑は一致する。しかし、裁判長から量刑についてはイメージで答えて下さい、なんて言われたって素人にはとても判断がつくものじゃあない。それに量刑をイメージで決めちゃっていいものなのだろうか。素人判断に任せるんじゃなくて、やはり、裁判は専門家に任せるべきだろう。何も素人が人を裁くなんてえことをしなくたっていいんじゃないのか。これが殺人事件だったら、もっとコトは重大だ。被告人の一生を左右しかねないことになるんじゃないのか。

 裁判終了後、かかわったすべての人が集まって意見交換会。アタシの隣の隣に被告人が座っていてなんかヘンな気分。この人、裁判所の通訳さんだそうだが、それにしても見事な演技だった。ホントの犯人じゃないのかと思ったくらい。ハハハ。
1日、5千円。2日で1万円の謝金をいただけるそうだ。d167fc0e.jpg
模擬裁判

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